日記 07月07日:(2001年)
今日は恋人たちの日です、おっと、七夕の日です。
めぐり合うことの大切さを皆が感じる日でしょうか?
会員数も580名を越えました。この会員数があれば活発な
交際申し込みも行われます。一人でも多くの人が自分の心
安まるお相手にめぐり合えるように祈るばかりです。
いま失えば、二度と会えない人。
久しぶりに三浦哲郎の「忍ぶ川」を読み直しましたので一言触れ
てみたいと思います。
この作品は作者の結婚にいたるまでの経緯を描いた小説で、ご
存知の方も多いように、芥川賞を得、映画化(栗原小巻主演)もさ
れました。
作者は青森県出身で、家族の血に対してある種の劣等感を抱
いて青春時代を過ごしていたようです。姉が二人自殺をし、兄
が二人失踪し(そのうちの一人が、家の財産のほとんどすべて
を換金して失踪)、残ったひとりの姉はほとんど失明状態の障害
者なのですから・・・。
学生時代、下宿のそばの小料理屋さんに働く人気の彼女と、初
めてのデートで彼女の故里へ一緒に行くことになります。実は彼女
の故里は深川州崎で、かって有名な遊郭地帯なのです。
作者ははらはらしながらどれが故里の家なのか、親は娼婦だった
のか、と心配するのですが、それは娼家に囲まれた射的屋だった。
そこで、彼女は父のこと、母のこと、幼児にここで過ごした思い出
などを実に楽しそうに、明るく語り、
「これで、わたしのことは、すっかり話しました」
というんですね。
世にも無垢で素朴な女性を見た、と作者は思います。そのとき
まで、自分の血のことは話せずにいて、作り話をしていたので、
そんな自分がとても恥ずかしく思えてしまう。
家に帰って、手紙を書く。(男は、話しが苦手なんです)。先に書
いた家庭の実情を語り、最初の姉が自殺したのが、様々な悪夢
の発端だったが、それが作者の誕生日だったことから、作者は
自分の誕生日を祝ったことがない、というようなことを書いた。
だれにも話したことのないことをすっかり話して、それで去って
いくのなら仕方がない、という思いで書いたようです。
その小料理屋さんは近くなので、手紙はその店のお手伝いさんを
通して渡し、折り返し、お手伝いさんが、箸の袋の裏に走り書き
した彼女の返事を持ってきた。
「こんどの誕生日には、わたしにお祝いさせてください」
この彼女を自分の妻に出来たら、と作者はこのときに思ったそう
です。
この人と一緒にいきていたら、幼児からの血の劣等感をきれいに
ぬぐいさることができるのではないか、と。
いま失えば、二度と会えない人、とその時思ったのです。
七夕の日なので、美しいお話しを書いてみました。
会員数、1000人を目指して、頑張ります。頑張りましょう!